1. 1 書名:Piping Handbook 第7版 Mohinder, L.Nayyar 著 約2500頁 McGraw-Hill 社 2000年刊 125US$
アメリカの代表的なハンドブックである。第1版は1930年刊で、赤い表紙の縦18cm、幅11cm、厚さ5cmの手の平に収まるような、まさに “Hand” book であった。それから7版を数えるが、最近の改訂は、新しい技術の紹介を加えるだけでなく、前の版とは力点を置く分野を変えるなど工夫しており、新しい版が出たからといって、前の版は不要ということにはならない。内容は大きく4つのセクションに分けられている。即ち、A:配管の基礎、B:股計で考慮すべきこと、C:産業(用途)別配管、D:非金属配管。この本の扱っている分野は広く、配管用語を調べる辞書のようにも使えるので、何かと利用の機会も多く、配管技術者の手元に置いておきたい1冊である。
写真左は1945年出版の第4版。
1. 2 書名:Piping Design Handbook 初版 John J.Mcketa 編 1198頁 Marcel Dekker 社 1992年刊 299.95US$
本書は,主として石油化学プラント,パイプラインの配管般計に焦点を絞った百科全書のようなところがあるが,専門度も極めて高い本であり,初級者向けというより,中級者向け以上と言えようか。82人の専門家がそれぞれの分野を執筆しているが,その内容は本書のために書き下ろされたものではなく,本書出版以前に発行された同じ編者の Encyclopedia of Chemical Processing and Design(シリーズものの膨大な図瀋と思われる)より,配管設計者が実際に遭遇するであろう様々な場面に役立つものを編者が選び出したものである。編者はこれら多種多様の記事を分類して,10の引出し(章)を作り収納した。例えば,第7章 Pipeline Shortcut Methods には22の,主としてチャートにより近道して解を得る方法が紹介されている。例題が多いのも読者の理解の助けとなるであろう。本書は頁数に比し値段が張るが、冒頭記述の分野において、見つけるのが難しい資料が得られるとすれば、リーズナブルな値段といえよう。(kg・m単位の併記はない。)
1. 3 書名:Facility Piping Systems Handbook 第2版 Michael Frankel 著
1210頁 McGraw-Hill 社刊 2002年刊 125US$
訳せば「設備配管ハンドブック」である。即ち、施設、ビル、住宅などに必要なさまざまな諸設備、たとえば、ろ過装置、下水・消火設備等の野外公共設備、液化ガス貯蔵設備、屋内水周り、蒸気・復水輸送設備、圧縮ガス系統、真空系統などの配管とスペシャルティを解説している。同じ社から出ている「Piping Handbook」がパイプの材料、強度、フィッティング、弁など、樹に例えれば幹の部分を扱っているのに対し、本書は幹から枝に分岐したあと、即ち、上記諸設備への応用編ということができ、実務的な内容となっている。配管工学研究協会が1955年に発行した配管ハンドプック第4版産業図書(株)は扱っている範囲が本書とよく似ている。
1. 4 書名:Piping and Pipeline Engineering George A. Antaki 著
539頁 Maree I Dekker, Inc. 社 2003年発行 139.95US$
本書は実務的な配管技術一般の参考書であるが、視点は専ら、広い意味での配管強度に置いている。本書が扱う配管用途は、様々なプラント配管、パイプラインと広い、また、扱っている「配管技術」の範疇も設計、建設、検査、保守・補修、と広範囲である。これら各分野にかなりきめ細かに入り込んでは、具体的な評価の仕方を説明している(一例を挙げれば、コンクリートアンカボルト強度の評価方法)。また随所に、実際に起きた事故事例(例えばフリックスボローの事故)をケーススタディ風に挙げて説明しており、説得性がある。第1章では配管技術年代史、各種基準、規格、標準のリスト類が、また、各章の最後の節をその章に関係する、参考資料・図書のリストに当てるなど、データベースが豊宮である。本書は扱っている内容は広いが、手ごろな厚さなので、少し英語力のある人が、本書を精読、読破すれば、配管技術全般(特に強度面)の習得、復習が適うであろう。使われている単位はin·Lb 系である。
1. 5 書名:CASTI Guidebook to ASME 831.3 第2版 Glynn E. Woods、Roy B. Baguley 著
267頁 McGraw-Hill 社刊 150US$
ASME B31.1 「Power Piping」の兄弟分であるB31.3 「Process Piping」の解説書で、B31.3の内容を図や写真を豊富に使ってわかりやすく解説しており、ASMEの考え方とその周辺のことがよく理解できる。
本書の前半部は毎年米国で開催されるASME B31.3セミナーの教科書の内容とほぼ同じであり、著者はそのASMEセミナーの講師である。
ここに示すのは第2版であるが、2005年12月にB31.32004年版を対象とした、第4版が発行されている(150US$、E·book : 75US$)。尚、同じシリーズで、ASME Sec.Ⅱ、Sec.VIII Sec.IX、なども発行されている。
1. 6 書名:Buried Pipe Design 第2版 A.P. Moser 著 約600頁 McGraw-Hill 社 76US$
埋設配管の専門書であり、現在、日本にこのような埋設配管単独の本はない(*)。
章は、・外部荷重、・内圧のない配管(レベル差による流れ)の設計、・内圧のある配管の設計、コンクリート配管、・スチールとダクタイル鋳鉄の配管、・プラスティック配管、・管据付け技術などの構成となっている。埋設配管にかかる土圧荷重や車両荷重の計算式の考え方などを説明し、埋設配管は土壌の性質や、埋戻しのやり方により、対外荷重強度が大きく変わってくるが、それら要素がどのようにして配管強度に影響を及ぼすなども教えてくれる。
(*) 1971年に、「埋設管設計法」原田干三 著が森北出版より、出版されたことがある。
2. 1 書名:Plastic Piping Handbook 初版 David A. Willoughby、ほか 著
561頁 McGraw-Hill 社 2002年発行 99.95US$
この書の特徴は、この1冊にプラスチックパイプの配管設計、据付に携わる人に必要な知識、ノウハウが、圧損、強度の評価方法を含め、ー通り入っていることである。プラスチック配管だけに特化したこのようなハンドブックは日本にはまだない。いままで、金属配管に携わってきた人が、金属とは異なるプラスチックパイプ特有の性状と設計・施工上の留意点を勉強する本としても適している。600種以上に及ぶ化学生成品(流体)に対する温度別(20~
140℃)耐久性を示すリストは特筆に値するかもしれない。このリストを含め、本書に掲載の主要な表は米国George Fischer社のハンドブックから借用したものであり、その他、他資料から引用されたものが多い。本書は初版本で、今後版を重ねるごとに、プラスチック配管の益々の使用拡大と相俟って、ポリッシュアップされていくことを期待したい。
2. 2 書名:Piping Materials Guide 初版 Peter Smith 著
345頁 Gulf Professional Publishing 社 2005年発行 74.99 US$
著者は英国人で、石油、ガス関係のプロジェクトに30年間携わった経験を持つ。本書はPiping Material Engineerの入門書、或いは手引書として書かれている。Piping Material Engineer(PME)とは配管クラスと製造、試験、保温、塗装に関する配管仕様書を作成する人のことである。第1章ではPME の果たすべき業務内容を紹介し、第2章では石油化学プラントで使用される規格と標準を、第3章は、材料選択のガイドとして、石油化学プラントでよく使われるASTM管材、約60種をASTMを引用して簡潔に紹介している。第4章では管や管継手の製法、寸法/重量諸元(kg· m単位併用)、第7章バルブでは石油化学で最もよく使われるボール弁を詳しく紹介している。
本は小型の美麗な本である。
2. 3 書名:Valve Handbook 初版 PHILIP L. SKOUSEN 著 726頁 McGraw-Hill 社 1998年発行 99.95 US$
バルブを広く全般にわたり紹介、解説した書である。従って、個々にあまり深くは入り込まない。弁の選択基準(弁流量係数(Cv値)、流量特性、密閉性、接続端、圧カクラス、弁箱材質、ガスケット、パッキングの各親点より);各種手動弁.逃がし弁、調整弁の構造・操作・据付け・トラブルシューティング;アクチュエータ(手動、エアー作動、電動、)と付属品;弁のサイジング方法(Cv値の計算);弁でおきるトラブル(キャビテーション、騒音、漏洩、など)とその対策、などについて解説している。弁全般を一通り勉強したい人、弁のユーザーとして、ちょっと参考にしたい向きには、お誂えの本であろう。
2. 4 書名:Valve Selection Handbook 第4版 R.W.Zappe 著
324頁 Gulf Professional Publishing 社 1999年発行 80.95 US$
本書は、調整弁と自動弁を除く、手動弁、逆止弁、圧力逃がし弁、ラプチュアディスク(これも弁?)を扱っている。弁の各タイプ毎の解説の最後に、duty(その弁のなすべき本分)とservice(その弁に適した用役・流体)を極めて簡潔に纏めているなど、"弁の選択"指向で編集されているが、duty、serviceに適した細部の構造を選択しようと思えば、じっくり各節を読む必要がある。頁数は2.3 Valve Handbookの半分以下で、字も大きく、第4版と版を重ねただけあって、読みやすく編集されている。ただ弁構造を示す断面図(特に写真様のもの)は図が小さかったり、コントラストがいまひとつのところがあり、ディテールまで読みとりにくいところがある(これは、2.3 Valve Handbookでも同じ。そこまで読める必要があるか否か読む側のケースバイケースであろうが)。シールのメカニズム(表面張力との関係)、玉型弁、仕切弁、バタフライ弁の中間開度の損失係数カーブ、など興味ある説明資料もある。調整弁と自動弁抜きで良いなら本の厚さも手頃で、こちらの方が手軽に読めるだろう。
2. 5 書名:Gaskets Design.Selection.and Testing 初版 Daniel E. Czernik 著
335頁 McGraw-Hill 社刊 1996年発行 42.74US$
本書は、締結部に使うガスケット(静止部に使用)の専門書である。ガスケットは、その特性に合致した締結部にセットされて始めて本来の性能を発揮する。従ってガスケットのみならず、ガスケット周囲(envfronment)の状況にも多くの頁を割いている。主な内容は、ガスケットの種類、製法、ガスケット構成材の材質、ボルト孔位置とシール面形状、締付けトルク(必要ボルト荷重)、シール面応力分布と試険方法・締結部におけるガスケット特性、経時変化、ガスケット試験項目と試験方法、ガスケット/ジョイントダイアグラム、ペースト(コーティング)、ゴム製ガスケットとOリング、ガスケットの有限要素法解析、ガスケットのリークとケミカルガスケット、等である。これらをASME、ASTM、及びPVRC(圧力容器研究評議会)の標準や報告書なども引用しながら解説している。日本には近年、この種のガスケット専門野はなく、ガスケットについてもっと深く知りたい人には打ってつけの本である。使用単位はft·lb系。
3. 1 書名:Fluid Mechanics with Engineering Applications 第9版 Joseph B. Franzini、E. John Finnemore 著
807頁 McGraw-Hill 社発行 103US$
題名の流体工学(Fluid Mechanics)は、どちらかと言えば、水力学(Hydraulics)に近い。初版が1916年とここで紹介する本の中では最も古い歴史を有する。改訂を繰り返す度に洗練されてきたのか、構成、各章の内容は吟味尽くされ、二色刷り、文章は分かりやすく、図は洗練され、見やすい。微積分など難しい数式も使っていない。「水力学の入門書として、お手本ここにあり」といった本である。現在の最新版は第10版である。本書には海外版(内容は同じ)があり、米国版より安い。第10版が丸の内 丸善本店に腔いてあった(06年1月現在)。
3. 2 書名:Flow of Fluids through Valves, Fittings, and Pipe (Technical Paper No.410) Metric Edition
123頁 Crane Co., 1999年発行 30US$
弁、管継手を含む配管系の圧力損失を求めることに徹し切った実用の書。本書前身の初版が1935年、現在の書名になったのが1942年、抵抗損失を直管相当長さL/Dから抵抗係数Kに切り替えたのが1976年、SI単位版が1977年、そして最新版が1999年発行と長い歴史を有する。豊宮な、公式、図表、データ、例題が最大の魅力。使い勝手のよい本である。1976年以降の本書の考え方を数行で以下に示す。
「弁、管継手の抵抗係数は K=Cfr で表される。ここに、fT は完全乱流域の管摩擦係数、Cは相当間管長さ(L/D)に相当するもので、一つの製品シリーズ(或いはタイプ)であれば、サイズが変わっても不変である。」。
今回紹介する参考書の中でも、一押しの参考書である。
3. 3 書名:Fluid Flow Handbook Jama M.Saleh 編 約1020頁 McGraw-Hill 社 2002年発行 125US$
本書の特徴はHandbookというだけあって、とりあげている各技術分野の底は深くはないが、26人の執筆者が31の章を以て、流れ学に関する、広い様々な分野を覆っていることである。局部流体抵抗(弁、管継手ロス)の章では、データの量は一般の流体力学の本より豊布であり、今回紹介している、Crane社のFlow of Fluids、やHandbook of Hydraulic Resistanceのデータ、更には日本で余り知られていない"2-K method"の方法が随所に引用されている。
また本書の後半においては、血管内の動水力学、ミクロとナノの流れ、ポリマー添加による乱流における抵抗の低減、などといった流体力学の新しいトレンドにもそれぞれ1章を設けている。
3. 4 書名:Handbook of Hydraulic Resistance 第3版 I. E. Idelchik 著
790頁 Begell House 社 1996年発行 140US$
配管を構成する各種コンポーネント類の圧力損失計算に必要な抵抗係数データを豊富に集めた、ユニークな本である。機械学会発行「技術資料秤路・ダクトの流体抵抗」に抵抗係数のデータが多数載っているが、データ種類の多様さで、このハンドプックに及ばない。
著者はロシア人、圧力損失に関する多数の論文を出しており、米国においても著名。掲載データは多岐・多量だが、コンポーネントの種類ごとに章を改め、データの前に詳しい解説があり、一旦紐解けば、とっつき易い。全12章からなり、各章共、前半が「解説と推奨」、後半が「チャート(diagram)集」で構成されている。「格子、スクリーンの抵抗」、「各種機器類の抵抗」にも一つの章を与えている。なお、この本は国会図書館新館3階科学技術室(開架式)で見ることができる。
3. 5 書名:Flow of Industrial Fluids—Theory and Equations 初版 Reymond Mulley 著
CRC PRESS 社 2004年発行 80.62US$
タイトルにIndustrial Fluidsとあるように、産業やプラントなどの場で流体の圧力損失、流量、管サイズなどを求めるための実践の書である。著者は長く計装エンジニアとして、実際の流れの場で活躍した人で、圧力損失を求める際の適切なアドバイスが随所に出ている。例えば、「圧縮性流体の代表的流れである断熱流れと等温流れのうち、管外温度が流体より低い場合を除き、断熱流れで計箕すると良い。なぜなら断熱でない場合も、断熱で計算しておけば管サイズは安全サイドになるから。」などである。本書はどちらかというとハンドブックのように「引く」本というより、語り口調で進められる。こまめに小見出しが付いているので、跳ばして読む場合にも便利である。構成は「非圧縮性流れ」と「圧縮性流れ」に大きく分かれ(圧縮性流れが全体の3割弱の頁)、かつ各章を、本章とそれに対応する補遺章で構成し、本書で基本事項を、補遺章で部分的詳細を記述。
「非圧縮性流れ」の補遺章では、2カ所にレジューサ(拡大)のある安全弁放出管の臨界圧力、臨界流量などを、理想流体の場合と実際流体の場合とにおいて求める例題を掲げている。使用単位はft-Lb系とm-kg系併記だが、部分的にft-Lb系のみのところもある。
3. 6 書名:Fluid Mechanics for Chemical Engineers 第2版 James 0. Wilkes 著
755頁 Prentice Hall 社 2006年発行 120.8US$
本書は一般のFluid Mechanics(流体工学)の本とは構成、内容を異にする。第1部(第1章から第4章)が巨視的流体工学で、水力学の基礎式と、管・各種化学機器(ボンプ、パックドベッド、フィルター、サイクロンセパレーター、bubble·cap 分留塔、等)内の流れを説明。頁数の7割を占める第2部は微視的流体工学と数値流体力学(C F D : computerとナピエ・ストークス式による解析)。微視的流体工学では、第5章:流れを記述するベクトル解析と差分方程式の用法、第6章:それらを使った直交、円筒、球各座標系における粘性が支配的な、例えばポリマ製造過程の問題解決の事例。第7章:粘性のない流れ(渦なし流れ)の問題と多孔質物質内流れ事例への適用、第8章:境界層、潤滑、カレンダ加工(表面平滑化)、薄膜の状況下でおきる、速度に選択配向のある2次元流れ解析、第9章:乱流、連動量とエネルギー輸送の間の類似、第10章:泡、2相流、液状化、第11章:非ニュートン流体、第12章:マイクロフルイディックス(微小流体技術) とエレクトロカイネティック(電圧による流れの制御) 、そして最後の2章がC F D。第13章:C F Dの概要と教育用ソフト"Flow Lab"による解析事例。第14章:COSMOL(FEMLAB) による解析事例。第13,14章以外も、各章5題の詳しい解答付き例題があり、実務的である。第2部は微積分学の下地必要。
3. 7 書名:Fundamentals of Fluid Mechanics 第5版 Munson、Young、Okiishi、著
890頁 WILEY 社 2006年発行 122.95US$
本書裏表紙に「流体の力学(Fluid Mechanics)をマスターするためのベストセラー教科書」とうたっているが、いかにも「これが教科書」といった体の本である。理論は簡潔に述べるにとどめ、例題と演習問題に多くの頁を割いている。米国の理工学系参考書は日本の参考内に較べ、演習問題に重きを置く傾向があるが、実戦に役立つことを第1に考えたためであろう。WebSiteとドッキングして、多角的に理解できるようにしている点でユニークだ。WebSiteを利用するには、本書表紙裏に密封されたカードにある登録番号を使って登録する。このWebsite を利用して、本書内容に関連した80のミニビデオを見ることなどができる。本書の取り上げている内容は米国の他の「Fluid Mechanics」の参考書と変わらない。尚、本書の本題を解くためのアドバイスと解答が同じ著者の"Student Solutions Manual and Study Guide to accompany Fundamentals of Fluid Mechanics 第5版"として出版されている。
3. 8 書名:Piping Calculations Manual 初版 E. SHASHI MENON 著
666頁 McGraw-Hill 社 2004年発行 98.95US$ ペーパーブックスタイル
タイトルは「配管計算マニュアル」であるが、中身は圧力損失とそれに関連する事項(ポンプNPSH,システムヘッドカーブ等々)に大部分の頁を使っている。配管流体の種類や配管が使われている産業は様々であり、圧力損失計算のやり方には共通部分のあるものの、流体の相違や、その産業が発展してきた技術系譜の相違により、各分野の"技術文化"が異なり、圧力損失計算のやり方(プラクティス)にも相違がある。本書は、一般水系配管、消火設備配管、排水配管、蒸気配管、圧縮空気配管、油系配管、ガス系配管、燃料ガス供給配管、低温液化ガス配管、スラリー・スラッジ配管の9つの章にわけ、それぞれの章を完全に独立させ、章毎に完結させている。即ち先に記した、各分野独自の相違部分はもちろん、共通部分もまた各章毎に載せている。従って、摩擦損失係数を読みとるムーディ線図が本書には9回出てくる(ムーディ線図が如何に広範に使われているかがわかる)。他にも重複するチャート、表、文は多数あり、無駄があるようにも見えるが、必要な時にその章だけ読めば事足りるというメリットがあり、本書のような構成もひとつの"行き方"であろう。入門者から中級者まで使えると思われる。
4. 1 書名:Practical Stress Analysis in Engineering Design 第2版 Alexander Blake 著
690頁 Marcel Dekker 社 1990年発行 95US$
本書が、一般の材料力学の教科書と大いに異なる点は、実用に重きを置き、機械と構造設計者のために、難しい理論から入らず、すぐ設計に役立つように編纂されていることである。本書のタイトル冒頭のpracticalはそれを意味している。本書の対象とする構造・形状は極めて具体的、かつ広範囲である。配管技術者から見て、特に配管に特科された部分を抽出すれば、アイバー、パイプフランジ(リブ補強フランジ含む) 、(配管用)ブラケット、管と容器、の各強度、外圧強度、ボルトジョイントの設計、ハンガークランプ部の管に生じる応力、外力による枝管部強度、等々である。配管技術者の座右の書として揃えて置いて損はないと思われる本である。
4. 2 書名:Metal Fatigue in Engineering 第2版 Ralph I. Stephans ほか3名 著
463頁 John Wiley & Sons.Inc 社 2001年刊 96US$
本書は、設計、開発、事故解析などに携わる専門技術者および学生のための金属疲労の本で、初版1980年、20年ぶりの改訂である。著者も一人を除き入れ変わり、その後の知見が追加された。最初に疲労の歴史を概観し、疲労とはどんな現象かに始まり、単純な話しから、より複雑な話へと、疲労解析の方法、疲労寿命の予測/評価、につき解説してゆくので、初学者でもついてゆけると思われる。具体的内容は、・疲労設計の方法、・金属疲労を微視的/巨視的に見る、・疲労試験とS-Nカーブによる方法、・繰返し変形とε-N曲線による方法、・線形弾性破壊メカニズムの基礎と疲労き裂成長への適用、・ノッチとその影響、・残留応力と疲労破壊への影響、・振幅が変化する荷重による疲労、・多軸応力、・環境による影響、・溶接部の疲労、・疲労の統計的見地の各章からなる。S-N 、ε-Nカーブによる寿命評価などには詳しい解答付きの例題が用意されていて、心強い。設計で為すべき事と、為すべきでない事の箇条書きが各章の最後についている。
4. 3 書名:Mechanical Behavior of Materials 第2版 Norman E Dowling 著
829頁 Prentice Hall 社 1999年発行 113.4US$
タイトルのMechanical Behavior of Materialsは材料の変形と破損をテーマとする分野で、米国では同名の本がたくさん出ている。日本ではこの分野の本はまだあまり多くないようで、タイトル名も定まっていないが、材料強度学とか、材料強度解析学というのがそれに相当するだろう。本書の内容は、・材料の構造と変形、・機械試験、・応カー歪みの関係と挙動、・組合わせ応力下の降伏と破断、・割れのある部材の破城、・ノッチのある部材の疲労、疲労割れの成長、・塑性変形部材の応カー歪み解析、クリープ、等で金属だけでなく、ポリマー、セラミックス、のデータや事例も含まれている。疲労に4割以上の頁を割いている。本書は主として、学生向けの教科野として野かれているが、分かりやすく書かれているので、技術者にとっても材料の変形・破損のメカニズムを知り、その防止をはかる入門の書として格好の本である。単位はm-kg系。尚、本書はAmazon.comで当初入手したものは、印刷が悪く、文字がかすれたり、写真が良く見えなかったりした部分があり、Amazon. comにクレームをつけたら、別の正常の本を無料で送ってきた経緯がある。
4. 4 書名:Statics Analysis and Design of Systems in Equilibrium Sheri D. Sheppard/Benson H. Tongue 著
636頁 Wiley 社 2004年発行 104.35US$
平衡状態にある構造物にかかる力を自由体図(物体に作用する力とモーメントをベクトルでその掛かる位置と共に表した図:Free Body Diagram)を使って如何に表すかを、演習に次ぐ演習で体得させようとするユニークな本である。先ず、自転車の各部材にかかる力の説明から始まり、ついでゴールデンブリッジの構造へとつなぎ、読者の興味を引きつけてゆく。「この自由体図は正しいですか、間違っているとすればどこが間違っていますか」というような設問の謎解きの興味と、満載の美麗な写真、図に引きずられて、前へ前へ進むことができる。引く本ではなく、演習のための本である。エンジニアリングの問題解決においては、その問題をいかに的確に図に表現するかということが、問題解決の第1歩であり、重要なステップとなるが、そのような力を本書によるトレーニングで高めることができよう。本書は学生を対象に書かれているが、技術者の入門書、再入門書としてもいい。
姉妹編として、Dynamics: Anlaysis and Design of Systems in Motionがある。単位はkg·mを使った問題と、ft·lbを使った問題がほぼ半々になるよう気を使っている。
5. 1 書名:Process Plant Layout and Piping Design Ed Bausbacher、Roger Hunt 著
464頁 PTR Prentice Hall社 1993年発行 90US$
本書は主として、石油化学プラントの経験年数の比較的浅い"空間"設計者向けに、プラント全体から機器毎のディテールまでを、プラントを構成する機器類(*)と周りの配管についての配置上の遵守、留意事項を中心に、640余りに上る豊富な図を使って、教科書風に記述したものである。初級者のみならず、経験者も、またプロセスプラント以外の、例えばパワープラントなどの設計者にも参考になるであろう。(*: コンプレッサ、ドラム、熱交換器、加熱炉、ポンプ、反応器、塔、など。) ラック配管にも一つの章を設け、23頁に亘って、懇切にそのポイントを説明している。機器と配管の配置について、ここまで詳しく書かれた本は、残念ながら国内には無いと思う。図があるので読みやすく、初級者が英語の勉強も兼ねて読めば、プロセスプラントのレイアウトは如何にあるべきかを一通り教えてくれる本として、 これ以上のものは無い様に思われる。
5. 2 書名:Pipe Drafting and Design 第2版 Roy A. Par i sher、Robert A. Rhea 著
311頁 Gulf Professional Publishing 社 2000年発行 55.95US$ 大形ペーパーブックスタイル
配管製図の入門・初級者向け教科書といった趣の本である。石油化学プラントをモデルに説明している。この種の本も日本にはない。管,管継手,フランジ,バルブ,機器の表し方,画く手順(コツ) ,を説明。続いて、P&ID,配管仕様(クラス分け),機器配置につき、ー通り説明したあと、それらの集大成として、塔槽,リボイラ,熱交換器,貯槽,ポンプ,配管ラックのある、かなり複雑な配管(配置)図を白紙の状態から完成図に至るまでの作成手順をステップバイステップで、多数の図と説明文により、解き明かしてくれる。配管コンポーネントの表し方と画く手順は、手書きの場合と、CAD(AutoCAD)場合の双方の説明がなされている。補遺としてフィッチング、フランジなどの寸法表がインチとmm双方の単位で掲載され、実務に便をはかっているが、当然のことながら規格はANSIである。
5. 3 書名:Piping Databook 初版 Mohinder L. Nayyar 著 857頁 McGraw-Hill 社 2002年発行 81.5US$ 大型本
イメージとしては国内で出版されている「配管ポケットブック」に似ているが扱っている内容は各段に広く深い。パイプ・フィッティング(金属・非金属/ASME · API · AWWA ·MSS)の種類・寸法と管の各種接合法の解説・図・表に全857頁の約8割を割いている。他に、パイプサポート(金属・非金属管用)、ガスケット(種類・寸法)、そして最後に、配管関連資材(弁含む)の米国メーカー、ファブリケータと世界のその系列会社、約600社のアドレスが載っている。輸出プラントや、米国規格の材料で製造するプラントにおいて、図面を書く場合、本書1冊で大抵間に合うと思われ、便利な本である。但し弁関係や鋼材のデータはない。使用単位はft·lb系とm·kg系、双方のテーブルを載せている。
6. 1 書名:Mechanical Engineering Reference Manual for the PE Exam 第11版 Michael R. Lindeburg 著
1396頁 Professional Publications 社刊 2001年発行 123.48US$ 大型本
本書は米国の国家資格PE(Professional Engineer)機械工学部門の受験参考書である。それほど専門性は高くはないが、受験者でない実務者にとっても、機械工学の全てを網羅しているので、あると便利な一冊本であろう。初版が1975年で、現在、第11版と版を重ねているだけに、内容、体裁共、洗練されており、必要箇所を引き易い。大きく14のTopics(テーマ)に分け、各Topicsが章に分かれている。14のTopicsは、数学、流体工学、熱流体力学、動カサイクル、熱移動、空調、力学、材料、基本機械設計、運動と振動、制御系、プラントエンジニアリング、経済分析、法と倫理、それにかなりの量の各種補助データが付録としてついている。全体的イメージは日本の機械工学便覧の基礎編と、応用編の部を併せたものに相当しようか。プラントエンジニアリングのTopicsはプラントと関係がある工程管理、計装、加工法、マテハン、防火、探境、電気、照明をひとまとめにしたものである。
7. 1 書名:Instrument Engineers' Handbook. Volume 1: Process Measurement and Analysis 第4版
Bela G. Liptak 編 1920頁 CRC PRESS 社 2003年刊 160US$
郵便屋さんが「重い荷物ですよ」と言って届けてくれた本である。本の大きさも通常の本より一回り大きく、百科事典のような風格をしている。
本書はInstrument Engineers' Handbook 全3巻の内の第1巻で、プロセスに使用する計器と分析器の概要を紹介した本である。本書の一大特徴は"あらゆる種類の"と言って良いほどの多種類の計器、分析器を収め、その原理、特徴を、図、写真をふんだんに使って説明したところにある。この第4版だけでも5 0人の専門家が執筆しており、日本では余り見かけないスケールの大きな本である。頁の6割を計器に、4割を分析器に割いている。例えば配管技術者に深く関わりのある流計には250頁を割いており、取り上げている流計の種類は29種に及ぶ。そしてそれらの各種類毎に、その冒頭に使用可能な圧カ・温度、流体、流量、精度、コストなどが簡潔に記されているのも便利である。尚、このHandbookの第2巻 Process Control & Optimizationの第4版が2005年に刊行された。
7. 2 書名:Pump Handbook 第3版 I. J Karassic 著 1765頁 McGgraw-Hill 社 2001年発行 135US$
配管につきものの機器と言えばポンプであり、配管設計者はポンプについてのある程度の知識が要求される。本古は「ポンプのことなら何でも来い」と言った類の本である。この第3版は第2版出版から以後15年間の技術進歩を取り入れた改打版である。ポンプ型式別の理綸と楕造、ポンプ駆動方式、ポンプの用途など詳しいが、配管設計者に直接関係ありそうなところを幾つか挙げてみると、渦巻ポンプの注水軸封、最小流量制御、給水ポンプ降水管の過渡現象、配管圧力損失(ハーゼンウィリアムス、マニング、米国水力学会、クレーン社の各計算式、データ)、ウオータハンマ、ポンプ吸込管形状、等にかなり詳しい説明があって、配管技術者としても、随時参考にしたい本である。SI単位が併記されている。尚、本書第2版の訳本が地人書館から1998年に発行されている。
7. 3 書名:PETROLEUM REFINERY ENGINEERING 第4版 W.L.Nelson 著 960頁 McGraw-Hill BOOK 社 1958年刊
著者は20世紀前半の石油精製の世界的権威で、本書は1936年初版の石油精製技術についてのバイブルともいえる本である。精製の歴史とその発達、石油の成分精製製品とテスト方法、物性、プロセスの紹介、精製と蒸留工程、補助工程と操作、精製腐食と金属、溶剤処理と抽出工程、脱蝋、流体力学、燃焼、蒸発と液化、分留と塔類、電熱と熱交換器、加熱炉、熱分解と分解工程、設計の経済学等がその内容である。流体力学の中ではFanning's equationの式、等価管長(Crane Companyからのデータを主としている)を用いての計算を紹介している。化学工学に重点を置いた本で、取扱う単位もft-lbではあるが、プラントに関係する機器設計、配管設計者は一度は目を通すべき内容のある本であろう。
8. 1 書名:Worlds of Flow A history of hydrodynamics from the Bernoullis to Prandtl 初版 Olivier Darrigol 著
356頁 Oxford University Press 社 2005年発行 74.5US$
本書は18世紀前半のベルヌーイから20世紀前半のプラントルに到る2世紀間の流体力学の歴史を語るアカデミックで、知的興味を満足させてくれる本である。但し、流体力学に興味ある人、流体力学を専攻する人向けで、読み通すには、ある程度の物理学、或いは流体力学の索養と英語読解力(工学書では使われない語彙が頻出)が必要かもしれない。表題のWorlds (複数)は理想流体(古典流体力学)と実際流体(水力学)の二つの世界を意味し、流体力学がこの二つの世界、各々の独自の進歩と、互いの相克を経つつ進化してきた過程を、第1章 流体運動方程式、第2章 波、第3章 粘性、第4章 渦、第5章 不安定、第6章 乱流、そして第7章 抗力と浮力、という構成で、時代と共に移りゆく流体力学の争点となったテーマを軸に時代を迫い、随所に当時の文献の1節を引用しつつ、語っている。これら章のテーマ一つ一つがまた「流れの世界」を意味しているのであろう。著者はフランス国立科学研究所で研究局長を務める歴史物理学者。即実用のための工学書ではないので念の為。英国の出版。
8. 2 書名:To Engineer is Human Henry Petrosky 著 Vintage Books(ペーパーブック)
251頁 1992年発行 10.46US$ (当初1985年にSt.Martin' s Press より出版)
本のタイトルは、「エンジニアリングするのが人である」と言う意味で、著者Petroskyの著書は日本でも「橋はなぜ落ちたか」など数冊の訳本が出ている。1996年に畑村洋太郎が「失敗に学ぶ」を出版し、日本に"失敗"を見直す先鞭をつけたが、ここで紹介する本はその10年も前に技術の世界における失敗の意義を説いたもので、一般の人にも理解し易く書いている。本書の中では失敗の物語である、カンザスシティーのハイアットリージェンシーホテル空中歩廊の崩落、コメット旅客機の疲労破壊、タコマ橋の崩城、洋上石油掘削設備キーランド号の倒壊、の下りが最も興味深く、逆にロンドン水晶宮の成功物語は余り面白くない。また本書の最後の方でコンピュータに依存しすぎる今日の技術界に危惧の念を表しているが、的を射た警告であろう。「進歩のためには変化が必要であり、変化あるところに失敗の機会が多い。失敗は次の成功に役立つ。」と、失敗に押しつぶされようとするエンジニアにエールを送っている。本書の英文は技術書に比べ、文の構成が分かり難い部分もあるので、英文に慣れない方は、訳本「人はだれでもエンジニア:北村美都穂 訳、鹿島出版会、1988年刊」の併読が良いかもしれない。訳本は絶版だが、県立川崎図書館にあり。